【若葉】
「あ、そうだ、光彦くん。ちょっと、こっちに来て」
【光彦】
「ん……なに?」
ベッドに腰掛けたままの若葉に、無造作に近づいていく。
若葉の気持ちも落ち着いたようだったから、こちらも安心していいはずだ。
【若葉】
「はい、そのままかがんで」
【光彦】
「うん」
素直に従う。
お互いの顔が随分と近くになってしまうので、さすがに少し恥ずかしい。
いつもの調子を取り戻した若葉が、こうやって俺をからかおうとしているのかもしれない。
【若葉】
「ふふ……ありがとう、光彦くん。………………ちゅっ」
【光彦】
「……………………」
思考が止まった。
俺と若葉の距離はゼロ。
つまり、唇と唇が重なって……えーと、これって、キス?
【若葉】
「ん、ちゅ…………はぁ」
【光彦】
「!!!! ちょ、ちょっと若葉さんっ!?」
【若葉】
「これ、私を励ましてくれたお礼ね。やっぱり恥ずかしいから、誰にも言っちゃだめよ」
【光彦】
「い、言えるわけが……!!」
全校に何人いるかわからない、若葉のファンに刺されてしまいそうだ。
【若葉】
「さてと、光彦くん、仕事に戻ろうか。
とりあえず、予定通りに探索の打ち合わせをして……どうしたの、光彦くん?」
【光彦】
「あ……うん」
どうして、あんなことをしたばかりなのに、この人は平気な顔でいられるんだろう。
熱くなってくる顔をどうしようもできないまま、俺は混乱の極地に差し掛かっていた。
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