各種運動部の人間に悟られないように、気配を消したままで、体育館を離れる。
その時、ふとプールの方からこちらへとやってくる影に気がついた。

【歩武】
「ん……?」

おとなしそうな見た目と、それに反した意志の強そうな瞳をした……とても小さな人物だった。
ここにいるんだから、俺と大差ない年齢のはずなのに、その人物は本当に小さかった。
いや、小さいなんてもんじゃない。
ちびっこだ! これはきっと、ちびっこという存在だ!

【歩武】
「職員の人が、子供か孫かを、ついつい連れて来ちゃったのかなぁ」

【???】
「誰がだ、馬鹿者」

【歩武】
「へ……?」

目の前のちびっこは、俺のよく知る言い方で罵倒してきた。
そのまま考えること数秒。俺は、すぐに驚くべき事実に気がついた。

【歩武】
「ぶ……部長!? ちびっこが部長だったなんて!!
 いや、むしろ、部長がちびっこ!?」

【雲母】
「ちびっこちびっこと連呼するな! 他の人間より、少しばかり省スペースなだけ
 だろうが!
 環境破壊が叫ばれる今こそ、私のような地球に優しい、エコな体が求められるんだ」

【歩武】
「エコの行き着く先は、部長体型なのか……」